山吹の季節
2008.05.25 ( Sun ) ![]() 北向き斜面の麓(ふもと)を縫うようにして 小川が流れていた。 一跨(ひとまた)ぎで渡れるほどの せせらぎをなぞるように 黄色い花が新緑の木陰に咲く。 それを合図にしたかのように 上流のため池の栓が ひとつ抜かれた。 ![]() 勢いよく流れだした水は日当たりのいい 沢の中央を下り 川底にできた幾つかの水たまりを 次々に繋(つな)いで流れてゆく。 水かさを増した小川は 川底に転がる小石の数だけ キラキラと輝き ゆらぎだした。 ![]() 遠くでトラクターの低く唸る音が 山間(やまあい)に響いている。 沢は 下るにつれ広がりを見せ 小川は二手に分かれ 一方はそのまま下り もう一方は北向き斜面の麓(ふもと)へと流れ込んでゆく。 そこには黄色い花と 所どころに白い花が やまの木陰に守られるようにして咲いていた。 新緑に色づいた木々の透き間から ウグイスの最後の鳴き声が 綺麗に響いてくる。 田んぼに水が張られ ひかり輝きだすと ウグイスは 鳴き声をカッコウに譲って 山の奥へと戻ってゆくのだろう。 ![]() 裕福な暮らしと引き換えに 失ったものの大きさに気づかない。 そう遠くもない昔 山吹の季節 沢の田圃には家族総出で 親戚総出で もっとたくさんの人影と 子供たちのはしゃぐ声があったはずなのに。 家族の絆 親戚の絆を断ち切るように 遠くでトラクターの低いうなり声だけが 響いている。 絆が薄れたから機械に頼ったのだろうか 機械に頼ったから絆が薄れていったのだろうか ぼくは今 都会の遊歩道の縁(へり)に腰を降ろし 日当たりのいい花壇に植えられた 山吹の花を眺めながら ドラマや小説でしか見たことのない現実を ぼんやりと思いやっている。 木陰に守られることもなく 咲き誇っても すぐに 光の強さに疲弊してしまうだろうに。 ![]() 田圃に水が張られると 水田は光を拡散させ レース越しの光のように 北向き斜面を やんわりと明るくさせた。 泣きやまぬホトトギスの物悲しげな鳴き声が 新緑のひかりに溶け込んでゆく 木々の合間を縫って 我が子の寝顔も知らない 我慢を忘れた自由たちが 驚いたように飛び去って行く。 ![]() 木陰に咲いてこそ 黄金(やまぶき)の花 Canon PowerShot S3 IS |
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