BADRUN:

 

     
      
≪ うたかたのとばりの隙間が口を開いた。 ≪ ≫ 山林に囲まれて朝を待った。 ≫

スポンサーサイト
--.--.-- (--)

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

1984 9 14 AM8:48 M6.8
2010.10.24 (Sun)






あの日 あの時も 
こんなふうに傘を打ちつける 石飛礫(いしつぶて)のような雨が 
降っていたのだろうか。 



雨は おびただしい平行線の軌跡を残して 降り続けた。
その霞んだ風景の向こう 尾根は静かにたたずんでいた。
雨が小康状態になると 薄いベールを一枚剥ぎ取って
あたりは 少しだけ明るさを増した。

その刹那。
大いなる眩暈(めまい) 脳味噌が一瞬で胃の中へ落っこちた感覚がした。
すべての景色が大きく揺らぎ 曲線を描いて崩れ落ちてゆく。

ふたたび雨脚が強まり 滲んだ風景のなか たたずんでいた尾根は 
コマ送りされた映像を見ているみたいに ゆっくりと動き出した。

腐葉(ふよう)した匂いを含んだ大気が押し出され 風となって沢を下った。

涼しくなったとはいえ まだ夏の熱(ほとぼ)りを残していた沢は
冷蔵庫の扉を全開したときの ヒヤッとする冷気に包まれた。

肩を落とすようにして動き出した尾根は 
水と空気を足元に含んで それを潤滑油として一気に加速していった。

きっとすべての音を含んだ轟音が響いていたのだろう。

だが 記憶のなか その風景は静寂の時間が止まった世界。



Canon PowerShot G11


はるか遠い昔の出来事だと思っていた。
そう 江戸時代か もっと前の時代
振り返れば 手の届くような過去のことだとは思いもしなかった。

もっとも身近な 彼の話を聞くまでは。

「土石流」って言葉を いままで聞いたことがなかった。
と 彼は話し出した。
これだけ雨が降れば 洪水とか川が氾濫したとか言うはずだろうにね。
土や石が流れてきたって どういうことなんだろうって思ったさ。
それは単にガケ崩れってことだろうって 連絡を受けた時思ったね。

その現場に立った時 その意味が痛いほどわかった。







outakigawa1010-2.jpg




消防団に入って初めての年のことだったからね。
忘れもしないよ。

長い鉄の棒を持たされてさ 
遺体に当たれば 布団に当たった感触がするからって言われたけど
土に埋もれた布団なんか刺したことないから わからんだろうって思ったさ。

全員 横一列になって 鉄の棒を刺しながら少しずつ進むんだ。
石に当たるか そうでなければ鉄の棒はどこまでも 
ズブズブと抵抗もなく沈んでいくんだ。

果てしなく土砂と石

だれひとり 布団の感触を見つけだすことができなかったんだ。







outakigawa1010-3.jpg







悲しみを埋め込んだ記憶は 残酷なほど美しい景色を残していった。




outakigawa1010-4.jpg



≪ うたかたのとばりの隙間が口を開いた。 ≪    HOME    ≫山林に囲まれて朝を待った。 ≫
     

profile

  えび

〇 Link free     ありがとうございます。 感謝しています。
気に入って頂けました画像がありましたら 著作権は放棄しておりませんが
個人的に使用される場合のみ お持ち帰りになって個人の責任において
使用および二次加工して頂いても結構です。
一方通行的なBLOGであることをお許しください。 観てくださった皆様に感謝しています。

  えび

     
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。