おしみなくわけへだてなく2006.04.30 (Sun)
遅いよ。
病室を覗き込むぼくを見つけて 手術を終えたきみが始めて弱音を吐いた。
感情の無いふりをして迷惑かけまいとしたって
やっぱり心細かったんだね不安で一杯だったんだね。
ぼくだって 手が宙に浮いちゃって仕事にならなかったんだ。
時計ばっかり気になっちゃってさ。
精一杯の笑顔で取り繕った言い訳が
しどろもどろになって泣き顔になっちゃうじゃないか。
両親の事を語ろうとしないきみは 二十歳(はたち)にも満たない時間のなかで
たくさんのものを棄ててきたんだ。
棄てきれず消せない過去なら これからは
きみの棄ててきた弱音を少しずつ ゆっくりと拾い集めて行けばいい。
二十歳(はたち)という時間を踏み台にして
大切で必要な笑顔を 手に入れられたらいいね。
惜しみなくわけへだてなく降りそそがれるものが
光でもなく神様でもなく 両親の愛情でありますように。
≪ 愛をわすれて ≪    | HOME |    ≫青空に落ちてゆく八重桜 ≫ |